飲食業は、このコロナ禍で最も痛恨の打撃を受けた業種です。
現在は徐々に感染者も減り、飲食業も回復の兆しが出てきました。そこで誰もが判断しない決断をした社長の話です。
このコロナ禍で、一番売上が低迷した時期で、前年比7%(93%減)という時期があったようです。
社長の会社は店舗数も100店舗以上、従業員数は1,000人超の大型外食チェーンです。
ここまでの規模になると、とても政府の補助金等では経営を維持することは困難です。
中には「働かずして補助金を事業資金ではなく自分の懐に入れてしまう」「本来受給資格もないのに不正に受給して投資セミナー」を行う等、税金をドブに捨てる、行政や本来困っている事業者を欺くような不届き者もいましたね。許せません!
行政側の手続きの簡素化も原因のひとつですが、国が急いだ理由として、事業者を助成することと、時期的に法人税や預かり消費税の支払い、そして期末の会社が多く、出費が増える時期だったからこそ、という理由もあり、手続きが簡素化され、「早く手元に現金を」ということが最優先されたのかと推測します。私は国の判断は否定しません。しっかり不正受給者を洗い出し、回収して欲しいと思います。
話を戻します。
全ての事業者が当てはまる訳ではありませんが、社員・アルバイト・パートさんを多く抱える事業者はとても政府の補助金では家賃やリース等の固定費、1,000人以上の従業員の人件費までとてもまかなえる金額ではありませんでした。
そういった理由で給料が減り、やむなく退職、転職せざるを得ない従業員さんもいたようです。
社長さんはそれに対し、退職は個々の判断であり「コロナ禍は仕方ない。でも下を向いていても仕方ない」とおっしゃっていました。行動制限が真っ盛りの時期は数十店舗を閉め、経営を維持する判断をしました。
下を向いていても仕方ない…というのは、痛みは伴ってしまいましたが【ピンチはチャンス】という考え方です。それは、「考えること」です。過去の記事にも書いたことがありますが、安泰な時は現状維持することを優先して考えることが比較的多いです。現状維持バイアスという現象です。
しかし、本当に後がない状況に追い込まれると、下を向いていればそのまま沈んでしまいますが、良いときも、悪い時も上を見ていると、勿論その状況から脱却する既を自然と考えます。
大体、その時の判断は【大胆な決断】となります。規模が大きく、従業員が多い事業者ほど、大きな判断が必要になります。消極的な判断では、会社が改善されるスピード以上に商環境の変化の方が早くなります。それはコロナ禍後の、誰も予測出来ない状況にあるからです。今後、また同様な事が起きる可能性もゼロではありません。
その大胆な決断というのが、数十店舗の【新規出店】です。しかも大型店舗です。
今後、外食産業がコロナ前に完全に戻るという事は、なかなか非現実的です。しかし実際にテイクアウトの充実化、キッチンカー等の活用で、この難局をこれまでのカタチを変えて維持する事を試み、同様のサービスを消費者に提供した。
手数料はかかりますが、それを下支えするウーバーイーツ等のサービスが拡大したという事実もあります。
そこで、社長が決断したのは【大規模な新規出店】
勿論、テイクアウトやウーバーの活用等はこれまでも行ってきました。
今回の決断は【一般論】でいうと、誰もが反対するような内容です。勿論、銀行にも反対されたようです。
一般論的な見方での根拠はありません。しかし、確実に言える事は人流は増え、飲食店の利用も増えます。お客様は当面増えるということです。もちろんインバウンド需要も含め。
需要が増えるという事は【確実な根拠】です。しかし、供給とのバランスという見方もありますが、社長は【根拠など無い。しかし今しかない。このタイミングで全社、全員が背水の陣でこの新規出店に注ぐ。あとは決断した自分を信じる】とおっしゃっていました。
会社の沿革も事前に拝見していましたが、私はこの社長の決断した根拠のひとつ【自分を信じる】というのが一番強い根拠だと私は感じました。
コロナ禍は想定外。それによって起きた現象も想定外。何もかもが想定外の中で、想定内の一般論が全て正しいという見方は違うと私自身も理解できます。
そして何より、飲食業界の復活を一番期待しているのは、我々消費者ですね。
温くて美味しい物をその場で食べることが出来る、気の合うメンバーで楽しくお酒を飲める、家族で楽しい食事(外食)を楽しむことが出来る。お店のスタッフさんと楽しい会話をしながら食事やお酒を飲める…
今回の社長の決断は、お人柄も見た上で、そういった【消費者の期待に応える】気持ちが強いお方だと私は感じました。その為に、そういった場所を無くさないように私たちも当面しっかり感染対策を怠ってはいけませんね。お酒が入った勢いで…なんて理由で再度飲食業界を難局に陥れるようなことが決して無いように我々消費者自身も自覚しましょう!
社長の決断の成功を心から祈ります。というか、成功すると私も信じます!
ご閲覧頂き、有り難うございました。
執筆者 金谷
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